皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
突然の結婚と謎の夢
ヴィルトール家に思いも寄らない知らせが届いたのは、それから一カ月が経つ頃だった。
知らせというよりは依頼というべきか。いや、強制力のある指令のほうがしっくりくる。
エリーヌに、皇帝リオネルとの縁談が舞い込んだのだ。
五日ほど前に宮殿からの要請で皇都に行っていたエドガーは、帰宅して早々エリーヌを部屋に呼んで話しはじめた。大真面目な表情から、決して冗談でないとわかる。
「おじ様、いったいどうしてそのようなお話に?」
ソファに座ったエリーヌは、身を乗り出して尋ねた。宮殿でのパーティーへの招待といい今回の話といい、困惑しかない。皇帝との結婚なんて考えたこともないのだから。
あのパーティーのあと、宮殿では夜会も開かれたが、エリーヌは疲れが出て部屋で休んでいた。つまり皇妃選定と噂されていた場に、しみじみ参加していない。
そもそも宮殿にはダリルから呼ばれて行ったのだから、リオネルの結婚とは関係ないはずだ。第一、エリーヌには魔力がない。
「魔石には相性があるのはエリーヌも知っているだろう?」
「ええ、もちろんですわ」