皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「でも、私の魔石は飾りも同然です」


魔法を使えない人間が皇族に嫁入りするなど、エリーヌは聞いたことがない。


「だが魔石であることは事実でもある」
「それはそうですけど……。それなら普通の人を皇妃にするのと同じではないでしょうか。魔石をつけていなくても、私よりずっと相応しい貴族の方がいらっしゃると思います」


生まれが男爵家のエリーヌでなく、それこそ公爵家の令嬢がいそうなものだ。歴代の皇妃の中に男爵の娘が嫁いだ人間はいないはず。

降って湧いた突然の結婚話、それも皇妃と言われて激しく動揺する。


「皇族としては、そうもいかないのだろう。魔力を弱めることに繋がり兼ねない。他国へのけん制の意味もあるのかもしれん」


エドガーは腕を組み、唸りながらソファの背もたれに体を預けた。

(おじ様の言っていることはわかるけど、私も一般の人たちとなにも変わらないのよね……)

エリーヌは左手首のバングルを見つめる。
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