皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
バングルをまじまじと見つめ、エリーヌがぽつりと漏らす。

果たして、この魔石についてなにか判明するのだろうか。エリーヌはオーラに包まれて生まれていながら、魔法はなにひとつ使えない。
魔力がないのか、それを使う資質に欠けているのか。前例がないため判然としないのだ。


「なにしろ魔石オタクだからな、彼は」


エドガーがハハッと高笑いする。

オーラには様々な色があり、その色によって使える魔法が違う。赤であれば火属性であり、青であれば水属性といった具合だ。

エリーヌの魔石は透明で色を持たない。透明なのに出産時によく見えたものだと不思議に感じるだろうが、わずかに光を帯びていたそうだ。

色がないゆえに魔力がないのか、解明できないまま。エリーヌが産まれてしばらくの間は、魔石研究者の間でも様々な論争が繰り広げられていたという。

時が経つにつれ透明な魔石の存在は薄れ、やがて人々の記憶から消えていった。
そうして十九年の時を経て、再び着目されたエリーヌはなんとも落ち着かない気持ちだ。

(魔法が使えないんだもの、きっとこれは単なる石なのよ。オーラに見えたものは太陽の光が反射しただけとか、そんなところだわ)
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