皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
エリーヌが産声を上げたのは、ちょうど朝日が射し込む時刻だったと聞く。両親をはじめ、みんなが早とちりしたのだろう。
そうでなければ、透明な理由もオーラの持つ意味も説明がつかない。


「まぁそれはともかく、ダリルはエリーヌの顔が見たいのだろう。たびたびよこしてくる手紙にもそう書いてある」


しかし研究所での仕事が忙しいため、はるばるランシヨンには来られない。ならば皇族の力を借りて呼んでしまおうとなったらしい。

ダリルが言うには、『エリーヌと話していると心が清らかになる思いがする』のだとか。
彼にはふたりの息子がいるが娘はおらず、余計にそう感じるのだろう。顔を合わせて話す機会がそうないため、希少性もある。


「それはとても光栄なのですけど、私などが行っても場違いではないでしょうか……」
「エリーヌは立派な侯爵令嬢だ。ランシヨンでも美しいと評判なのを知らないとは言わせぬぞ?」
「おじ様ってば、おやめください」


エドガーに大袈裟に言われ、エリーヌは両手を頬にあてて照れた。

ひとりやふたり、そう言ってくれる領民はいるかもしれないが、そこまで誉れ高いとはエリーヌは思っていない。エドガーの贔屓目だろうと。
< 5 / 321 >

この作品をシェア

pagetop