皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
「朝食の準備ができておりますので、ダイニングルームへご案内いたします」
「あっ、朝食ね」


想定外の初夜を過ごしたあとは慌ただしく時間が過ぎたため、そう言われて初めて空腹を思い出した。


「皇帝陛下もそろそろおいでになる頃かと」
「陛下もご一緒なの?」


てっきりもう仕事へ行ったと思っていたため、つい聞き返す。


「陛下からそう承っております」


そういえば昨夜、周りの人たちには仲睦まじい夫婦に見えるようにしたいとリオネルは言っていた。それもこれも心配をかけないためだろう。

アガットに付き添われ、朝食の間に向かった。

なんと朝昼晩と、食事をとる部屋が変わるというから驚きだ。太陽の向きに応じて変えると言う。日差しが射すことによって眩し過ぎず暑過ぎず。ほどよい環境を保つためなのだとか。
夜は宮殿が遠くに見える部屋が設けられているらしい。ランプに灯された宮殿は、それはそれは美しいのだとアガットが教えてくれた。

案内された部屋にリオネルの姿はまだなかった。
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