皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?
無邪気な質問をするマーリシアに微笑み返す。
貴族を相手にお茶をするだけでも、エリーヌにとっては恐れ多いが。


「おいしいクッキーもある?」
「そうね、あるかしら」
「いいなぁ、マーリシアも行きたぁい! お父様、いいでしょう?」
「マーリシアにはまだちょっと早いなあ。もう少し大きくなったらにしよう」


腕を掴まれてねだられたエドガーは、彼女の手を優しく包み込んで宥める。しかし上目遣いでかわいらしくお願いされたため、いつになく眉が下がった様子はまさしくデレデレだ。

娘には目がない彼だが、一年ほど前に終わった大陸間戦争では相手国を強力な魔力で圧倒した、ミッテール皇国きっての魔法師である。だからこそ国境の土地を任されている。


「それまでに魔法の勉強と鍛錬を積んでおかなくてはな」
「はいっ、お父様」


素直なマーリシアは頬を上気させて頷いた。
そんな彼女の手首には、エドガーと同じく青い色をした魔石のバングルがつけられている。
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