私の好きな人には、好きな人がいます
放課後はいつものように音楽室でピアノの練習をする。
高校に入学してからずっと変わらない放課後の使い方だ。愛華にとって一日の中で一番安らげる時間であり、心地良い時間だ。
愛華はいつもように音楽室のベランダに出て、グラウンドを見渡す。
そこには変わらず椿がいて、一生懸命に部活動に打ち込んでいる。何本も走ってタイムを測定している。彼はずっと前を向いて走り続けている。
そんな姿に愛華は心奪われたのだ。
自分も彼のように目標に真剣に向き合いたい。彼に負けないようにピアノを頑張りたい。
そしていつか、愛華と彼の世界が交わったら。
その時は、彼に胸を張れる自分でいたい。
そんな風に思っていた。
その想いは、彼に恋し、失恋してしまった今も変わらない。
愛華はピアノを弾き続ける。
彼に恥じない自分でいるために。