私の好きな人には、好きな人がいます
15話 溢れる想い
翌週の放課後。
椿から、「今日、部活早く終われそうだから、終わったら音楽室行く!」とメッセージが届いた。メッセージを受け取った愛華は、OKのスタンプで返事をしてピアノの練習に励んだ。
愛華なりにこの曲はもう自分のものにできている感覚があった。精度も十分に仕上げて来て、今日はそれを十二分に発揮するだけだ。
最高の演奏をして、気持ちに一区切り付ける。
そう決めてはいても、やはり寂しさは拭えない。
(椿くんと気軽に話せるのも、今日が最後なんだなぁ…)
椿のことだから、廊下で擦れ違えば声を掛けてくれるかもしれない。もちろんそれには答えるつもりではあるが、彼の世界にはこれ以上踏み込むことは決してないだろう。
二人きりで話すことも、今日がきっと最後だ。