離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
プロローグ
さらさらとペンを走らせる音。それを奏でる長い指。
普段はこの手でメスを持ち、繊細なオペをこなしている優秀な心臓外科医である彼が、どうして平凡な看護師の私の向かい側に座っているのか。
今でも夢なんじゃないかと思っている。
「さあ、きみの番だ」
ペンを渡された私は、彼の手からテーブルの上の紙に視線を移す。
そこには、一枚の婚姻届が広げられている。
すでに証人欄は記入済。
「夫になる人」の欄も角ばった字で埋まっている。そう、彼が今、その手で書いたのだ。
「はい」
「間違えるなよ」
「わかってます」
と返事をしたはいいものの、ペンを持つ手がどうしても緊張で震える。
本当にこれを書いていいのだろうか。
自分の中でもうひとりの自分が問いかける。
「えっと……」
もたもたしていたら、彼がおもむろに席を立った。
そして、私の後ろに回り込み、ぽんと肩を叩く。
「そう緊張しなくてもいい。これは離婚前提の契約結婚だ。本当の結婚じゃない」
「ひゃっ」
普段はこの手でメスを持ち、繊細なオペをこなしている優秀な心臓外科医である彼が、どうして平凡な看護師の私の向かい側に座っているのか。
今でも夢なんじゃないかと思っている。
「さあ、きみの番だ」
ペンを渡された私は、彼の手からテーブルの上の紙に視線を移す。
そこには、一枚の婚姻届が広げられている。
すでに証人欄は記入済。
「夫になる人」の欄も角ばった字で埋まっている。そう、彼が今、その手で書いたのだ。
「はい」
「間違えるなよ」
「わかってます」
と返事をしたはいいものの、ペンを持つ手がどうしても緊張で震える。
本当にこれを書いていいのだろうか。
自分の中でもうひとりの自分が問いかける。
「えっと……」
もたもたしていたら、彼がおもむろに席を立った。
そして、私の後ろに回り込み、ぽんと肩を叩く。
「そう緊張しなくてもいい。これは離婚前提の契約結婚だ。本当の結婚じゃない」
「ひゃっ」
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