離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
自分もシートベルトをすると、圭吾さんは迷いなく車を発進させた。

膝に置いた手が震える。

もう大丈夫だと思っても、震えは止まらない。

「怖かったな」

赤信号で、圭吾さんに頭を撫でられる。

今までで一番、彼の手を温かく感じた。

「いいえ、すぐ来てくれて助かりました。ありがとう……」

私はようやく安心して、大きな息を吐いた。

もう大丈夫。ひとりじゃない。

圭吾さんは信号が変わるまで、ぎゅっと私の手を握っていてくれた。


数分後、私たちは無事に帰宅した。

途中、あの黒い車が尾行してくるようなこともなかったので、ひと安心……だと思いたい。

ソファに座った私に、温かいお茶を出してくれる圭吾さん。

それをすすって落ち着くと、圭吾さんがゆっくり話しだす。

「黒い車にあとをつけられたんだな。画像はある?」
「あ、ごめんなさい」

スマホで写真でも動画でも撮っておけばよかった。

夜勤明けでボーっとしていたからか、まったくそういうことに気が回らなかった。

< 171 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop