離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「いや、いいんだ。普通は撮っている余裕なんてない」
「すみません……」

貴重な休日に、根拠のない不安で呼び出してしまった。

これで私の勘違いだったらどうしよう。落ち込んでしまう。

「夜勤でなにかあったか」
「あ……はい。安藤さん、私が圭吾さんの妻だって、知っていました。それで詰め寄られて」

安藤さんにつかまれた手首をさする。

まるで怨霊のようだった安藤さん。怖すぎる。

「ああ、あの弁当のときに目撃されたんだよな。オペ室でもさんざんいじられたが、病棟も噂になったか。おしゃべりなやつがいたものだ」

圭吾さんはため息を吐く。

「私がお弁当なんて作ったから」

私はもっと、圭吾さんと夫婦らしくなりたかった。

でもよく考えれば、病院でふたりでいたら、誰に見られるかわからないのは当然。

もっとよく考えて行動するべきだった。

「七海のせいじゃない」

安藤さんをあきらめさせるための契約結婚だ。いつか安藤さんと直接対峙しなくてはならなくなることはわかっていた。

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