離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「そんな悲しいこと言わないでくれ」

手をおろして見上げると、すぐそこに圭吾さんの顔があった。

眉を下げて私を見つめる彼は、病院でのクールな彼とはまったくの別人。

「俺が必ず、きみを守る」

ぎゅっと強い力で抱きしめられ、彼の顔が見えなくなる。

お互いの胸が重なり、どちらのものともわからぬ鼓動が肋骨に響く。

「だから、まだ俺の妻でいてくれ。俺にきみを守らせて」
「圭吾さん……」

するりと首にすり寄るように顔を寄せられ、思わず背が震える。

彼の鼻が私の鼻に接触する。長い睫毛が刺さりそうに感じて目を閉じると、唇に柔らかいものが触れた。

びっくりして目を見開くと、圭吾さんの顔が離れていく。

今、キスされた……。

「ど、ど、どうして」

私と彼は、偽の夫婦のはず。

付き合ってもいないのに、キスするのはおかしい。

そう思うのに、激しくなった鼓動の勢いが止まらない。

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