離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
わざわざ顔を寄せて言うから、彼の息が私の耳朶にかかってくすぐったい。

耳を押さえると、反対側の耳に彼のくすりと笑う声が聞こえた。

もう。こんなときにからかわないでほしい。

私はぎゅっとペンを握りなおす。

「妻になる人」の欄に自分の名前と住所を書いた。

力が入りすぎたせいか、いつもの字よりもへたくそになった気がする。

「書けました」

これを提出すれば、私と彼は夫婦になる。

「ありがとう。よろしく、かわいい奥さん」

彼の大きな手が私の頭を撫でる。

さっき彼が言っていたとおり、この結婚は契約結婚だ。

好きな人と付き合って結婚するわけじゃない。

だけど私の胸は、これ以上ないくらいに高鳴っていた。

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