離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
彼と出会うまでは夜景のなにが楽しいんだかわからなかったけど、今では素直にきれいだと思える。

窓の前のソファがちょうど空いていた。

座っているように言われ、夜景を眺めていると圭吾さんが飲み物を持ってきてくれた。

「こういうところに来たことは?」
「初めてに決まってるじゃないですか」

はっきり言って、自分がこんなところに連れてきてもらえるような人生を歩むとは思っていなかった。

庶民代表みたいな私は死ぬまで庶民で、同期と飲むのはもつ鍋屋で、いつか彼氏ができても同じような店でデートをするんだと想像していた。

「そうなのか。光栄だな」

グラスに口をつけ、彼が微笑む。

それだけで胸が高鳴る。

ああ、そうか。場所がきらびやかだからドキドキするんじゃない。

彼と一緒にいるから、この世界が輝いて見えるんだ。

きっと彼と一緒なら、どんな場所でもきれいに見えるにちがいない。

自分が安そうとか高そうとか、そんなことはどうでもよくなる。

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