離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
すごく短い期間だったしだいぶ特殊だったけど、一応私の患者さんだった人だ。

この世の終わりのような顔をしていたあの人が穏やかに過ごせているのなら、他に言うことはない。

「まったく、お人よしだな」
「そんなことないですよ」
「ま、そこがきみの美徳だと思うけど」

グラスの氷がからりと揺れる。

琥珀色の液体を飲み干した彼は、「そろそろ部屋に行こう」と私を促した。

さっと立つ圭吾さんに、私は少し拍子抜けした。

サプライズで予約してくれた高級ホテル。

東京の夜景を見下ろせるラウンジで、ふたりきり。

もしかして、今後の私たちについて、大事な話があるんじゃないかな……なんて思っちゃった。恥ずかしい。

いいんだ。あのときに彼の気持ちは聞いたもん。

あれからハッキリと付き合ってと言われたわけじゃないけど、相変わらず同居は続いているし、仲もいい。

何度か抱き合っているし、これは付き合っていると言っていいんだよね。


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