離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
圭吾さんは小さい子供をあやすように私の頭を撫でる。

「で、気に入るかわからないけど」

目から溢れるものをぬぐっていると、圭吾さんが上着のポケットからなにかを取り出した。

それは小さな箱。女子なら誰でもわかる、エメラルドグリーン色の箱から、黒いケースが出てくる。

まさか、まさか。

圭吾さんが箱をケーキの横に置き、黒いケースを開けた。

そこには、大粒のダイヤを支える銀色のリング。

「あああ……」

ダイヤに反射する光が眩しすぎて、両手で顔を覆う。

というのは冗談。まさか指輪までサプライズで用意してくれるとは思わなくて、感動で胸がはちきれそうになった。

倒れそうな私を支え、圭吾さんが顔をのぞき込む。

「大丈夫? 嫌だったら別のデザインにしてもらおうか」
「違います。う、うれしすぎて」

せっかくいい雰囲気なのに、涙で顔がぐちゃぐちゃだ。

圭吾さんはこんな私のいったいどこがいいのか。本気でわからない。

今も嫌がらずに微笑んで、私の肩を優しく撫でている。

「喜んでもらえてよかった。末永くよろしく」
「はい、こちらこそ」

これからもずっと彼と一緒にいられるんだ。

微笑んでくれる圭吾さんにつられ、私も泣きながら笑った。


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