離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
とにかく、救急やICUに行ったらガウンを着ることもあるだろう。覚えておくにこしたことはない。

感染対策の重装備でオペ室に通された私は、見学用の踏み台の横で待機するように言われた。

ドラマで出てくるような、オペ室を見下ろせるガラス張りの見学室なんてなく、普通はこうして手術台の近くから見学するらしい。

そりゃそうだよね。近くからじゃないと、先生の主義も看護師の補助の手順もよく見えないもんね。

待機していると、麻酔科の先生や看護師がぞくぞくと中に入ってくる。

みんな重装備なので、誰が誰だかわからない。

「疲れたら適当に休憩して。じゃあ、患者さん入れるからね」

看護師に声をかけられ、うなずいた。

患者さんがベッドから手術台に移乗させられる。

私が踏み台に上がろうとしたとき、オペ室の自動扉が開いた。

「笠原先生」

誰かが呼びかける声に、心臓が跳ねた。

キャップやマスクでお互いに目しか見えないけど、彼は私に気づくだろうか。

圭吾さんは補助の先生や看護師に目配せをして患者に近づく。

< 226 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop