離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
出ている目が優しく細められる。
患者さんは「はい」とうなずいた。
「ではまず麻酔を……ん? 見学者か?」
圭吾さんが台に登ろうとしている私に気づいた。
「奥様ですよ、先生」
オペ室ナースがからかうようにネタばらしする。
ああ残念。終わるまで黙っていたかった。
「ああそう。気分が悪くなったら隅っこで座ってろよ。じゃあ麻酔を」
「はい」
圭吾さんが言い、麻酔科のドクターがうなずく。
おお? めっちゃ塩対応だったな。
そりゃそうか。今からオペなんだもん、そっちに集中して、他のことは考えないようにしているはずだ。
よし、私も集中しよう。
患者に点滴の針が刺され、モニターの電極が装着される。
オペ室の看護師が人工呼吸用の器官内チューブを入れてそれぞれをてきぱき固定する。
迷いのない手つきだ。内科の看護師ではこうはいかない。
麻酔が効いて患者さんが眠ったころ、圭吾さんが言った。