離婚前提婚～冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます～
「これより冠動脈バイパス術を始めます。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

圭吾さんの手に、手術道具が渡される。

患者さんの胸がメスで切られ、ぱかっと開いて中身が見えた時には、さすがにうっとなった。

学生のころにさんざん映像を見たはずだけど、内科に入ってから人体の中身を見るのは久しぶりで、だいぶ緊張する。

見ているだけでもドキドキして指先が動かなくなってくるのに、圭吾さんは迷いなくさっさと切るべき場所を切る。

その手つきは鮮やかと言う他ない。

速すぎて、補助の看護師さんがついていけないくらいだ。と言っても圭吾さんの指示に一拍遅れて反応するという程度で、私からみたら看護師さんもじゅうぶん速い。

見ているだけで、背中が汗で濡れていくのがわかる。


彼はあれよあれよといううちに他の場所からとった血管を詰まりそうな動脈を切除した場所に縫い合わせ、傷口を塞いでしまった。

「術式完了。お疲れさまでした」

目で追うのがやっとだった。

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