離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
普通は二、三時間かかるオペが一時間と少しで終わった。神速の異名は伊達じゃない。

圭吾さんはオペ室から出ていき、看護師たちは片づけをしたり、患者さんの様子を見ている。

私はそろりと踏み台から降り、お礼を言ってオペ室から出た。


病棟へ戻ると、師長に別の用事を言いつけられ、外来へ書類を取りにいくことになった。

帰りに職員用エレベーターに乗り込む。

「あっ」
「おお」

エレベーターのドアが開いてびっくりした。

そこには、スクラブ姿の圭吾さんがいた。

オペ後の患者さんをICUに送っていき、戻ってきたところなのだろう。

「お疲れさまでした」

エレベーターのドアが閉まる。

あんなにすごいオペをやってのけた直後なのに、汗一つかいていない。

「見に来るなんて聞いてなかったけど?」
「ふふ。びっくりさせようと思って」
「こいつめ」

圭吾さんは私の頭を痛くないように小突く。

誰も見ていないという安心感。エレベーターっていい。

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