離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「すごかったです。全然迷わず、さくさく切って縫っていくんですもん。まるで漫画みたいでした」
「あーあの、昔の有名な漫画家のやつだろ。無免許医が多額の手術料取ってオペするやつ。顔に縫合痕のある」
「そうそう、あんな感じでした」

圭吾さんのオペは神業、神速などいろいろな噂を聞いてきたが、実際に見てそれがどういう意味か初めて理解した。

とにかく手技が早くて確実なのだ。

話しているうちに、エレベーターが病棟に着いた。

私が降りると、圭吾さんもあとについてくる。

職員用エレベーターのホールは、職員カードがなければ開けることができない。

一般の患者さんやお見舞いの人や付き添いの人が誰もいない、中途半端な空間にふたりきりになる。

「きみもオペ室に来るといい」
「いやあ私はあんなに素早く介助できないですよ。それに、私は病棟で苦しんでいる人たちに寄り添いたいんです」

オペ室の看護師は、患者さんとオペの時間しか一緒にいない。

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