離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~

第二章

結局オペには遅刻せず、その日は無事に終わることができた。

その後も笠原先生は忙しすぎて病棟にいる時間が短く、いても患者さんの部屋を回るのみで、看護師たちと話すことはそうそうなかった。

用事のある看護師はムリして先生をつかまえに行っていたが、みんな緊張しているようだった。

それもそのはず、ひとり残らず冷たい塩対応で返されるからだ。

同意書にサインを求めれば、無言でサインして突き返す。そんな先生らしい。

ドクターの中には看護師と話したくて、イコールちやほやしてほしくて仕方がない人もいるが、先生はそうではないようだ。

そんなわけで、私と先生はいまだに顔見知り以上でも以下でもなかった。

図書室での一件で距離が縮まったような気がしていたのは、私だけのようだ。

「槇、飲みに行こう」

ある日の勤務帰り、千葉くんに食事に誘われた。

学生の頃はよくみんなでファミレスに行って、指導者の悪口や実習の愚痴を言い合ったっけ。

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