離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
患者さんは看護師を好きにする権利はないけど、望む医療を受ける権利はある。

入院費の滞納とか、暴力事件を起こしでもしない限り、出禁にするのは難しいのが現状だ。

個人的には絶対に許さないけど、私は井上さんの「医療を受ける権利」を剥奪することはできない。

「そうしよう。しかし被害者はきみだけじゃないようだな。まったく、迷惑な患者だ」

ラウンド中の看護師がナースステーションの前を通るたび、視線を感じる。

そうよね、笠原先生がこうして感情を露わにしているの、あんまり見られないもの。

看護師には冷たいと思っていたけど、ピンチのときはちゃんと守ってくれた。

今までのイメージが、いい意味で崩れていく。

怒っている先生の横顔を見ていると、誰かがコロコロとカートを押してナースステーションに入ってきた。

「おい槇、セクハラされたって?」
「千葉くん、声が大きいよ」

他の患者さんも聞いてるかもしれないんだから。

たしなめると、千葉くんは「ごめん」と小さな声で謝った。

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