離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「先生、その患者強制退院ですか?」

千葉くんが笠原先生に話しかける。茶化している様子はなく、真剣な表情だ。

「いや、初犯だから厳重注意だ。次やったら強制退院からの出禁だな」
「でも、他にもやられた子がいるんですよね?」

たしかに、被害者は私だけじゃない。

昔から千葉くんは仲間を大切にする、いいやつだ。

学生のときも班員が指導者に泣かされると、いつもフォロー役になっていたっけ。

「まあな。でも槇が今回は見逃すって言うから」
「槇が? それでいいのか?」

先生を見ていた千葉くんがこっちを向く。

笠原先生は小さくため息をついた。

「あとは仲良し同期で話し合ってくれ。邪魔したな」

先生はくるりと背を向け、私たちから離れていく。

「あのっ、ありがとうございました。助かりました!」

お礼を言い忘れていた私は、慌てた。

先生は「気にするな」とでも言うように、背を向けたまま手をひらひらと振って行ってしまった。

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