離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「名物って? 普通の人でしたよ」

だいたい名物患者になってしまう人は、ひとくせもふたくせもある、アクの強い人だ。

入院の目的が不明だけど、それ以外は普通の美人さんだったように思う。

「あの人、どこも悪そうじゃないでしょ?」
「え、ええ」
「事故から三年も経っているのに、傷が痛いだとか頭が痛いだとか言って、やたら入院してくるの」
「えっ、自分で希望して?」

先輩たちは明らかに、安藤さんに好意を持ってはいないようだ。

それどころか、厄介者を見る目つきで特別室の扉を一瞥する。

「それは変わってますね……」

病院はなにかと制約が多い。

自由に出かけられないし、娯楽も少ないし。

なのにどうして、自分から入院するように仕向けるのか。

「なんでかって言うと、あの人、かまちょなのよ」
「彼氏に構ってほしくて、やたら体調悪いアピールするの」

私の中の安藤さんのイメージがどんどん悪くなっていく。

「その彼氏がね」
「まさかの、笠原先生なの」
「へ」

一瞬、理解が追いつかなかった。

安藤さんの彼氏さんが、笠原先生……。

ふたりの顔を交互に思い浮かべるけど、なかなか結びつかない。

そっか、そうだよね。

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