離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
残された私はひとりで震える。

やばいやばいやばい。絶対聞かれてた。

誰だって、自分の彼女の悪口を言われたら心穏やかではいられない。

いつ怒号が飛んで来るかとびくびくしてうつむいていると、笠原先生が深いため息を吐く音が聞こえてきた。

「槇」
「は、はい」
「今日、仕事のあと時間はあるか」

うつむいていた私は、思わず顔を上げた。

先生はさっきよりも若干不機嫌そうな雰囲気が和らいでいる。

でも、時間があるかどうか聞かれたってことは、仕事のあとにお説教タイムってことかな。

例のヒステリック指導者・木林さんのことを思い出し、ずうんと心が重くなる。

「そう怯えるな。説教しようって言うんじゃない。ちょっと話したいことがあって」

笠原先生はポケットから小さなメモ帳を取り出し、さらさらとなにかを書きつける。

「これ。よろしく」
「えっ、あ……」

一ページ破られたメモ帳を渡された私は、周りを気にしながらそれを見る。

そこには待ち合わせ場所と時間が書いてあった。

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