離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
なんて言い訳をして、学生時代とほぼ同じような格好をしてきた自分を呪う。

行くのをやめてしまおうかとも思ったけど、一方的に渡されたメモの空白に、「お前に拒否権はない」と書かれているような気がした。

店に近づくと、表札と間違えそうな小さな看板の横に笠原先生が立っていた。

今日は外来当番だったからか、シャツにスラックスというシンプルな服装だけど、なぜか絵になる。

「来たか」
「お、お疲れ様です」

笠原先生は私を見たけど、服装については特になにも言わないし、顔をしかめるでもない。

「す、すみません。こんな格好で」

量販店のTシャツデニムでリュックなんて。今どき大学生の方がちゃんとした服着てるわ。

TPOをわきまえないやつに恥かかされたとか思われたらどうしよう……。

そんな私の心配は杞憂に終わった。

「ん? 恰好?」

なにを言っているのかわからないというような顔をする彼。

「もう少しきれいな格好をするべきだったんですけど」

説明すればするほど、余計に恥ずかしくなってくる。

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