離婚前提婚～冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます～

「……先生の恋人だって、それだけ聞きました」
「やっぱりな」

本当はもっといろいろ言われていたけど、正直に話したところでお互いにいいことなどひとつもなさそうなので、言葉を濁した。

「嘘だよ」
「え？」
「それ。特別室の患者が俺の恋人だとか、婚約者だとか。それは真っ赤な嘘だ」

笠原先生は真剣な顔でキッパリと言った。

一瞬返事に迷った私たちの間に割り込むように、料理が運ばれてくる。

サラダ、スープの次にメイン料理のカニクリームコロッケ。

食欲をそそるキツネ色に揚がったそれから湯気が立ち上る。

「うまいうちに食べよう」
「は、はい。いただきまーす」

そっか、あの人笠原先生の彼女じゃないんだ。

なんだか心が軽くなり、ついでにお腹も空いてきたので少しずつ食べはじめる。

でもどうしてわざわざ私を呼び出してそんな話を？

「食べながらでいいから聞いてくれ。質問はいつでも受けつける」

そう前置きし、笠原先生はステーキを切り分けながら話を切り出した。