離婚前提婚～冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます～

「えぐ」

えぐい。

決して今食べたレタスのことではなく、安藤さんの実家のすごさのことだ。

ＭＲＩやサイバーナイフを作るなんて、すごい。他にもいろいろ手広くやっていそう。

そりゃあ、あの大病院の御曹司と娘が結婚したら、実家の医療機器を大量継続購入してくれるだろうもんね。

そうかあ、そういう家の子が医者と結婚できるんだ。そうよなあ。

世間のえぐさを味わいつつ、おいしい料理を食べる。

「本当に、商魂逞しいというか、えぐいんだよ。まあそういうわけで、兄と菜美恵がムリヤリ結婚させられそうになったわけだけど」
「はあ」

ムリヤリ結婚させられるって聞くと、だいたい女の人が被害者だと思いがちだけど、笠原家の場合は安藤家の押しが強くて、お兄さんが犠牲者になりそうだったのね。

「でも兄は菜美恵に惹かれはしなかった。菜美恵に出会う前から彼女がいたんだ」
「ええっ、大変じゃないですか」

修羅場の予感がする。

それに対してカニクリームコロッケは外はサクサク、中はとろりとして、なんともいえずにおいしかった。