離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
病棟で一番お金に困っていそうな看護師が私だったから、こうして食事に誘って変な契約を持ちかけたのだ。
そうでなければ、私が笠原先生に指名される理由などない。
私はごくりと唾を飲み込む。
「それって、ちゃんと書面とか作ってもらえるんでしょうか」
両手を膝に置き、居住まいを直して見つめると、先生はこくりとうなずいた。
「契約書を作ろう。俺のことが信じられないなら、今すぐまとまった額を振り込んでもいい。それを確認してから契約でも、こちらは構わない」
「それなら……」
息を整え、私は頭を下げる。
これはチャンスかもしれない。不運だった、私たち家族のための。
「その契約、乗らせていただきます」
顔を上げると、笠原先生は満面の笑み──とまではいかないけど、表情が明るくなっていた。
「本当か。恩に着る」
先生は立ち上がり、私に右手を差し出す。
「よろしく頼む」
「こちらこそ」
私は先生の手を取った。
繊細なオペをする手は、指が長くてしなやかだった。
そうでなければ、私が笠原先生に指名される理由などない。
私はごくりと唾を飲み込む。
「それって、ちゃんと書面とか作ってもらえるんでしょうか」
両手を膝に置き、居住まいを直して見つめると、先生はこくりとうなずいた。
「契約書を作ろう。俺のことが信じられないなら、今すぐまとまった額を振り込んでもいい。それを確認してから契約でも、こちらは構わない」
「それなら……」
息を整え、私は頭を下げる。
これはチャンスかもしれない。不運だった、私たち家族のための。
「その契約、乗らせていただきます」
顔を上げると、笠原先生は満面の笑み──とまではいかないけど、表情が明るくなっていた。
「本当か。恩に着る」
先生は立ち上がり、私に右手を差し出す。
「よろしく頼む」
「こちらこそ」
私は先生の手を取った。
繊細なオペをする手は、指が長くてしなやかだった。