離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
第四章
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槇七海との契約が成立した翌日、俺は菜美恵の病室を訪ねた。
一応主治医なので、毎日軽く顔を出すようにはしていたが、数秒で出ていくようにしていた。
だが今日は、こちらから話がある。
特別室に入ると、菜美恵はパジャマにカーディガンを羽織った姿でソファに座っていた。
「圭吾」
菜美恵は俺に気づくと顔をほころばせ、立ち上がった。
「やっと来てくれた。待ってたのよ」
「忙しくてなかなかすべての患者さんとゆっくり話している暇がないんだよ」
きみのことは患者としてしか見ていない。
そう伝えたつもりだったが、菜美恵は聞こえないような素振りでいそいそと電気ケトルで湯を沸かしはじめる。
「ケトルは持ち込み禁止のはずだが」
地震などで倒れると危ないことと食中毒の危険があるので、病棟にはケトルも昔の保温ポットも持ち込み禁止のルールがある。
「そうなの? 看護師は誰もなにも言わないけど?」
菜美恵はカップにインスタントコーヒーの粉を入れ、沸いた湯を注ぐ。
「圭吾はブラック派だったよね」
「いや、それを飲んでいるほどの暇はない。今日は大事な話があって来た」
「話?」