Cotton Candy.
 提出前の最終確認をしていた瀬那に、今年度の新人、佐久間くんの声がかかる。
 集中モードに入っている瀬那はいつものような笑顔がないので、少し話しかけづらい。
 一瞬ためらった佐久間くんの気持ちは、痛いほどわかる。

「い、いや。…F社の訪問…、時間もうすぐだなって、」
「あ。」

 話しかけてしまえばいつも通り、明るくて優しいお姉さんなのだけれど。
 …訪問の時間、忘れてたな。
 佐久間くんが教えてくれなかったら、書類のミスよりも大事だ。

「…あとやっとくから、はやく行きな?」
「うえーん、ほんとごめん!! ありがと!!!」
「このあと直帰だよね?」
「うん! 佐久間くんも帰りのしたくして行くよー。」
「で、できてます…!」
「…ありゃ、後輩も仕事がはやいぞ…、」

 佐久間くんの教育担当は綿谷さんなのだけれど、今日は研修と引き継ぎを兼ねて瀬那の訪問に同行するらしい。
 佐久間くんの出来のよさというか先回りのうまさは、綿谷さん譲りか。
 …対する自分の仕事のできなさには、嫌になるが。
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