Cotton Candy.
***
だれもいない資料室。
上司に「ついでに、」と、頼まれた他社の資料は、いちばん上の棚に鎮座している。
あと、少し。
限界まで伸ばした指先が、ファイルに触れる。
うまく背表紙の縁に指を引っかけて、そのまま引き出そうと、した。
しかし思いの外重たいそれが、私の手に収まることなく。バランスを崩して落ちてくる、かと、思った。
「あ、っぶな、」
瞬間、そんな声とともに頭上でファイルを押し戻す音がした。
それが、思ったよりも大きな音で。
近いところで鳴ってしまったものだから、私の体がびくりと跳ねる。