魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!

魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!#2

◯愛瀬家・めるの部屋(朝)

かわいい系の雑貨と、アニメグッズばかりが並ぶ部屋。
床には脱ぎっぱなしの服や、漫画が落ちている。
うさぎのイラストが描かれた目覚ましを止め、大あくびをするめる。
起き上がりながら目を擦る。

める「(昨日のことを思い出しながら)…夢オチかな。夢オチだよな」

◯愛瀬家・廊下(同)

顔を洗いに行こうと、階段を降りるめる。
洗面所の前で、透と鉢合わせる。
すでに身支度を済ませている透と、まだパジャマ姿のめる。
透、めるに気づいて微笑みかける。

透「おはよう」
める「お、おはよ…」

める固まる。
める(やっぱり夢じゃない?!)

T 魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!

◯愛瀬家・表(同)

珠鈴「いってらっしゃい」

笑顔で手を振る珠鈴に見送られながら、外に出るめると透。

める・透「いってきます」

歩きながら大あくびをするめるの隣を、透が歩くスピードを合わせて歩いている。
める、ハッと我に返る。

める「って、ちょっとお?!なんであんたも、当然のように一緒に行こうとするわけ?!」

慌てふためくめるを見て、くすくすとおかしそうに笑う透。

透「だって、俺たち同じ学校だし……」
める「うそぉ?!」

める、ギョッとした顔で透の制服を見る。
見慣れたネクタイ、同じエンブレムの付いたブレザー。
スカートと同じ柄の、チェックのスラックス。
上から下までじっくりと見つめられ、思わず頬を染める透。

める(ほ、本当にうちの制服だ……)

透、納得した様子のめるの顔を覗き込む。

透「もしかして、気づいてなかったの?」
める「(ジト目で見ながら)……いきなり見合い相手って言われて紹介されたやつの、服装まで見る余裕があると思う?」
透「うーん、ないかも……」

のんびり並んで歩く2人。
透、ふと思いついたように提案する。

透「せっかく婚約者(仮)になったことだし、手でも繋いでみる?」

イタズラっぽく微笑む透と、顔を赤らめるめる。

める「(キレ気味に)繋がない!!」

◯学校・昇降口(同)

それぞれ上履きに履き替えるめると透。

◯学校・階段(同)

階段を涼しい顔で上っていく透。
その3段くらい後ろを、苦しそうな表情で歩くめる。

◯学校・教室(同)

クラスのうちの、3分の2くらいが揃っている。
荷物を引き出しにしまっている生徒もいれば、数人ずつ集まって談笑している生徒たちもいる。
談笑していたうちの1人が、透に気づいて声をかける。

男子「あ、透おはよー」
透「おはよー」

める、当たり前のように、同じ教室に入っていく透にツッコミを入れる。

める「しかも同じクラスなんかい!」

◯学校・教室(休み時間)

ロード中の画面が表示されている、めるのスマホ。
スマホから顔を上げためる、クラスメイトと談笑する透の姿が目に入る。

める(ふーん。透って結構友達いるんじゃん)

める、視線をスマホの画面に戻す。

◯学校・教室(昼休み)

授業終わりの号令後、カバンから弁当箱の入ったランチバッグを取り出すめる。
クラスメイト達と会話中の透が視界に入る。

める(また誰かと話してるな……)

取り出したランチバッグとペットボトルを持って、廊下へ出ようとしためるを透が呼び止める。

透「める、どこ行くの?」

透が呼び止めた瞬間に、透と話していたクラスメイト達の視線がメルに向かって一斉に集中する。
脂汗をかくめる。

める「あ〜……外?」

しどろもどろになるめる。
透、笑顔を浮かべながらリュックを背負う。

透「天気良いもんね!……せっかくだし、一緒に食べよ!」
める「い、いい!」

つっけんどんな態度を取って、廊下を駆けて行ってしまうめる。

透「……」

ポツンと取り残される透を励ます、クラスメイトの男子。

男子1「残念、フラれちまったな。……でも今まで、お前らそんなに仲良かったっけ?」
男子2「それ思った!名前で呼び合うほど仲良かったなんて知らなかったわ〜」

男子1に肩を叩かれ、はは……と頭を掻く透。

透「まあ、色々あってね。……俺がほぼ一方的に、仲良くしてもらおうとしてるみたいなもんだけど」

顔を見合わせる男子たち。
透、リュックを背負い直す。

透「ごめん!やっぱりちょっと行ってくる!」

◯学校・中庭(同)

天気は晴天。風で揺れる草木の音に混じって、校舎の方からは生徒たちの賑やかな話し声が聞こえてくる。

透「あ!いた!」

ベンチで1人で弁当を食べているめるの元に駆け寄る透。

透「隣いい?」
める「……いいけど。あとさっきの、せっかく誘ってくれたのに失礼だったよね。……ごめん」
透「ん?全然気にしてないよ。ていうか、いきなり声かけてびっくりさせちゃったよね。俺こそごめんね」
める「……ううん」

ベンチにカバンを挟んで並んで座る、めると透。
める、おにぎりを齧りながら、熱心にスマホをタップしている。

透「何やってんの?」

透、おかずを美味しそうに食べながら訊ねる。

める「時ドキ私立ヴァンパイア学園。推しのクロード様のイベ中だから、ポイボ(※ポイントボーナス)狙うならこまめに回しとかないと」
透「へー。大変なんだね」
める「……」
透「……」

会話が続かない2人。
トントンと画面をタップする音だけが中庭に響く。
める、空気に耐えられなくなって透の様子を窺うも、特に何も気にしない様子でご飯を食べている。
める、ため息をつく。

める「……ねえ、私と一緒にいて楽しい?」
透「(食べようとしていた卵焼きを下ろしながら)なんで?」

める、目を泳がせてから俯く。

める「私よりクラスの子と一緒にいた方が楽しいんじゃないかと思って。(心配そうな顔で)……今から教室に戻ってもいいんだよ?」
透「ふーん……」

める、気まずそうに目を逸らす。
風でベンチの側にある木が揺れる。
透、少し考えてから、めるの方を見る。

透「ていうか、俺は好きでここにいるんだけど?……めるさえ良ければだけど、俺はもっとめるのこと知りたいなって思ってるし」
める「なっ?!」

顔を赤らめ、ギョッとした顔をするめる。
笑顔を浮かべる透。

透「言ったでしょ?俺はずっと前からファンなんだって」

透の言葉にドキドキしてしまうめる。
恥ずかしさに耐えられなくなり、そっぽを向き、悪態をついてしまう。

める「……どうせ私じゃなくて、魔法少女の私が好きなんでしょ!すぐに幻滅することになったって知らないから!」

透「(くすくす笑いながら)……それはどうかな?」

一方で、屋上からめると透を眺めている不審な人物が1人。
レースのあしらわれた黒い服に身を包み、長い黒髪をハーフツインに結った髪型をした少女(クロム)。

クロム「へえ……」

クロム、ニヤリと笑う。
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