魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!

魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!#5

◯敵のアジト(夜)

薄暗い部屋に、ぼんやりとライトの光が当たっている。
揉めているグレイとクロム。

クロム「あんた、ぜーんぜんダメねえ」
グレイ「なっ、うるさい!お前いつも見てるだけだろ!」
クロム「はあ……」

クロム、わざとらしくため息をついて、グレイの鼻スレスレの位置に人差し指を近づける。

クロム「いい?アタシはタイミングを見計らって攻める派なの。あんたみたいに、突っ込んで行ってばかりのバカとは違う」
グレイ「な、なんだと〜?!」

地団駄を踏んで、悔しがるグレイ。
クロム、クスッと笑って、めるたちが通う学校の制服姿に変身する。

クロム「真っ向に戦って勝てないなら、内側から崩してやれば良いの。ちょっとは頭使いなさいよ」

T『魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!』

◯学校・教室(朝)

いつも通りの教室。
める、机の中に教科書をしまっている最中に、透から声をかけられる。

透「あのさあ、今日の放課後だけど…」

扉が開いて担任の先生が入ってくる。

先生「うるさいぞお前らー。ホームルーム始めるから席つけー」

そそくさと自分の席へ戻る生徒たち。

透「(申し訳なさそうに)ごめん。また後でな」
める「ん」

生徒が全員席に戻り、ホームルームが始まる。

先生「転校生が来ることになった」

騒つく生徒たち。
めるは興味なさげに、窓の外を眺めている。

先生「クロム、入れ」

扉が開き、クロムが入ってくる。
いつも通りの黒髪ハーフツインに、ばっちりのメイク。短めに折られたスカートに、黒いニーハイソックスの出で立ち。
クロム、教卓の前で立ち止まり目元でピースする。

クロム「初めましてえ!アタシ、クロムって言います!(ウインクしながら)仲良くしてねん♪」

◯学校・教室(休み時間)

スマホに夢中のめる。
それに対して、クロムの机の周りを囲むように、興味津々な様子で女子たちが立っている。

女子1「どこに住んでたの?」
女子2「クーちゃんって呼んで良い?」
女子3「その髪型かわいいね!」
女子4「何でこっちに引っ越してきたの?」

クロム、次々に質問され、にっこりと笑顔を浮かべて答える。

クロム「んーとねー、お父さんの仕事の都合でこっちに引っ越してきたんだぁ。アタシのことは、好きに呼んでいいよぉ」

転校生のクロムと女子のやりとりを、めるの側で眺める透。

透「なんか派手なやつが転校してきたな」
める「ふーん、そうなんだ。クロード様のこと考えてたから全然聞いてなかった」
透「(呆れたように笑いながら)…今日も歪みないな」
クロム「え〜?酷いよお、主人公さん」

2人の前にいつの間にか立っているクロム。
ギョッとする2人。

クロム「アタシ、愛瀬さんとも仲良くなりたいなあ。もちろん、透くんとも」
ニコっと微笑むクロム。
める、愛想笑いを浮かべようとして、引きつった笑顔になる。

◯学校・廊下(同)

移動教室で理科室に向かう最中のめると透。
間に割って入るように、突っ込んでくるクロム。
クロム「愛瀬さーん、透くーん。アタシも一緒に行くー!」

◯学校・中庭(昼休み)

いつものベンチで昼食中のメルと透。
真ん中に置かれていたカバンをどかして、2人の間に座るクロム。
クロム「私も2人とごはん食べるー!」

◯学校・廊下(放課後)
昇降口は向かって、並んで歩くメルと透。

クロム「一緒にかーえ……」

クロム、腕を掴もうとするも、めるにひらりと躱されてしまう。

める「無理。用事あるから」

透の手を掴んで、足速に去っていくめる。
透、どさくさでも手を繋いでもらえた嬉しさで、頬が赤く染まる。

クロム「……」

その場で手を伸ばしたまま、面白くないと言わんばかりの表情で立っているクロム。

◯愛瀬家・リビング(夕方)

汗をタオルで拭う透。
める、イラついた様子でテーブルを拳で叩く。

める「なんなの?!あのおかしな転校生は!」
透「やっぱり気になった?クロムさん、やたら俺らに絡んでくるよね」

める、制服のままソファに寝転がる。

める「今日はあいつのせいで、全然気が休まらなくて疲れた!やかましいのが2人に増えたようなもんだし……」
透「……誰がやかましいって?」

透、めるの足下のあたりに腰掛ける。

める「あんた以外に誰がいるのよ」

める、寝返りを打って透から背を向ける。

透「ふーん?これでも、クラスじゃそこそこ静かな方だと思うけどな」
める「……」

目が合わない2人。
透、ふうと一息つく。

透「こうして2人で過ごせるの、なんかすごく久しぶりに感じる」

透、めるの手にするりと触れる。

める「……」

めるの表情は窺えない。

透「でもあんなに嫌がってたのに、自分から手を繋いでくれるなんて嬉しいな」

透、恋人繋ぎのように右手をめるの手と重ね合わせる。

透「(めるの方を見ながら)さっきのめる、珍しくちょっと強引でドキドキしちゃった。……仮でも、婚約者としてちょっとは意識してもらえたって思っていい?」

める、手を無理やり離して、ソファから勢いよく起き上がる。

める「(真っ赤な顔で)調子に乗るな!」

ずかずかと大股でリビングを出て行くめる。

透「……」

透、さっきまで握っていた方の手を、きゅっと握りしめる。

透「(さっきのめるの反応を思い返しながら)……ふふっ」

◯愛瀬家・めるの部屋(夜)

める、ずかずかとベッドまで歩いて行き、布団の上に身を投げる。
部屋に戻っても、さっきのことが頭を過ってしまい、頬が赤くなってしまう。

める(今までこんな気持ちになったことなんてなかったのに)
(どうしてあいつが相手だと、こんなにドキドキしてしまうの?)
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