冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
「で、着替えの替えはあるのか?」
「……いえ、持ってきてないです」
「そうか。ならもう帰れ。今日は仕事しなくていい」
こんな醜い容姿で仕事をするなと言うことだろう。
――いくら謝っても許してもらえないため、「予備の服、買いに行ってきます!」と、逃げるように橘さんの元から離れた。
ありがたいことに、私達のお店のすぐ横に朝早くから開いている洋服屋があるので、猛スピードで物色していると、
「詩織さん」
後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきた。後ろを振り返ると川本くんが立っており、「俺も身だしなみがなってないって怒られちゃいましたー」と、苦笑いしていた。
そんな川本くんの服装を見てみる。黒いTシャツの上から薄いジャケットを羽織っていた。ズボンもお高そうなジーンズだ。いつもの川本くんの格好だ。
「え、それでダメならどれがいいの?」