冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて


 キッチンをお借りし、野菜を包丁でザクザクと切る。その間に一希さんは肉を焼く作業に入ってくれていた。


「詩織、ご飯はレンチンのが棚にあるから。それ使って」

「――は、はい!」


 言われるままに棚上からレンジで温めるだけのご飯を取り出し温める。


 結局、夕食の準備も全て一希さんに助けてもらっている。仕事じゃないんだから、プライベートなんだからのんびりしてくれてても良いのに。


「一希さん、今は仕事じゃないので。私が準備をするので休んでてください」

「後から一緒にゆっくりすればいいだろ。料理も二人で作ったほうが楽しいし、仕事の時もそうだが詩織はなんでもかんでも一人で頑張りすぎなんだよ」

「……頑張ってなんてないです。当たり前のことをしているだけで……」

「頑張ってんだよ。ほら、もう肉焼けてるから食いながら野菜焼こうぜ」


 やめてほしい。そんなに優しい言葉をかけないでほしい。


 一希さんに恋愛するつもりなんて、もうないのに……優しくされたら決心した気持ちが揺らいでしまう。


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