冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
◆1.毒母からの逃亡
◆
ずっと母親から逃げ出したかった。
私が成長するにつれ、母の姿を目にする機会は減っていた。
そして、そんな母を見兼ねるように、私が中3の受験生の時に父は母と離婚をした。離婚理由は明かされていないけれど、恐らく母の自由奔放な、身勝手な行動から離婚を決意したのだろう。私も母ではなく、父と暮らしたかった。けれど、「アンタが出ていくなら私、今この場で死ぬから」と言われたことで、強制的に母と一緒に暮らすことを余儀なくされた。
私に「出ていくならこの場で死ぬ」と言ったにも関わらず、父と離婚をした母は更に家に帰って来なくなった。
たまに帰ってきたと思うと、わずかな食べ物のみを置いていく。もちろんお金をくれるわけでもなく自分で生活をしなくてはいけなかった私は、高校生になってから子供服などが売っているお店でアルバイトを始めた。
高校の時から働き始め、ありがたいことに卒業しても働かせてもらっている私も、もう23歳だ。今は正社員として働けている。
子供服やベビーグッズを品出しし赤ちゃん用品に触れるたびに、私は子供なんて産めない、絶対に結婚できない。幸せな家庭を持てる自信がないと思ってしまう。
それ以上に、家から出る勇気がない。
『アンタが出ていくなら私、今この場で死ぬ』母から言われたこの言葉は8年たった今も、私の心の足枷となっていた。