冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて


「どうしても今必要なのか?」

「渡さないと帰らないと言っていまして……」


 一希さんは財布を出し、「いくら?」と質問をした。まさか、一希さんが出すつもりなのだろうか。


「給料の半分を渡していまして」


 一希さんはパソコン上で私の給料明細を確認する。


「半分か……」

「……はい。あと、光熱費と家賃も別で母には渡してますので」

「相澤が使える金はどのくらい残るんだ」

「ギリギリ五万あるかないか、です……」


 一希さんは眉間にシワを寄せ、何かを考え込んでいる。そんな一希さんに『ボーナスも渡す』なんて言えなかった。


「どうしても渡さなきゃいけないのか?」

「……はい、恐らく、私が独り身の間は母の中でそういう決まりだと思います……」

「じゃあおまえが結婚したら母親はどうするんだ?」

「それは……そこまでは分かりません。私も相手なんていないので……考えたこともないです……」


< 31 / 66 >

この作品をシェア

pagetop