冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
「どうしても今必要なのか?」
「渡さないと帰らないと言っていまして……」
一希さんは財布を出し、「いくら?」と質問をした。まさか、一希さんが出すつもりなのだろうか。
「給料の半分を渡していまして」
一希さんはパソコン上で私の給料明細を確認する。
「半分か……」
「……はい。あと、光熱費と家賃も別で母には渡してますので」
「相澤が使える金はどのくらい残るんだ」
「ギリギリ五万あるかないか、です……」
一希さんは眉間にシワを寄せ、何かを考え込んでいる。そんな一希さんに『ボーナスも渡す』なんて言えなかった。
「どうしても渡さなきゃいけないのか?」
「……はい、恐らく、私が独り身の間は母の中でそういう決まりだと思います……」
「じゃあおまえが結婚したら母親はどうするんだ?」
「それは……そこまでは分かりません。私も相手なんていないので……考えたこともないです……」