冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
◆3.毒親へ物申す


「そうですねぇ、詩織さんが僕と結婚したらもう家には家賃光熱費は支払う義務はないと思いますので、切らせていただきますね。あと、詩織さん思った以上に大変な生活をされているので、お母さんの仕送りも無しでお願いします」


 一希さんの言葉に、お母さんの眉がピクリと動いた。

 見計らったかのように、一希さんは私に『シッシ』と、手で追い払う仕草をする。


 この状態で私一人出されたら仕事どころではない。そう思い、ぶんぶんと首を横に振るけれど、一希さんは「良いから!」と、合図をおくる。


「失礼します……」


 しぶしぶ事務所から出て売り場に戻り、商品棚のメンテナンスに入る。


 一希さんは私に話を合わせてくれた。それだけじゃない、母の前で結婚するとも言ってくれていた。


 私は一希さんと結婚することになるの? 叶うことはないと秘めていた一希さんへの気持ちが、一気に溢れ出す。


 一希さんはいったいどこまでお人よしなんだろう。同情で私なんかと結婚しても良いんだろうか。


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