冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて


 私が結婚するかもしれないということは知っていたけれど、私が橘さんと結婚するかもしれないことは知らないらしい。


 結婚も母の言いなりでさせられていると勘違いしてしまっているため、「違う」と否定する。


 一希さんにも心配をかけてしまっているのに、川本くんにまで心配をかけさせたくない。川本くんに仕事戻るように伝え、私もやりかけていた業務に取り掛かろうとしたところ、一希さんとお母さんは事務所から出てきた。


 言葉をかける間もなくお店から出たお母さん。一希さんは顔色を変えずに事務所の中へと戻って行った。


 お母さんと一希さんが事務所で何を話したのかを知ることができたのは仕事が終わってからだった。


 残業無しで帰ることができたため、ご飯を作って一希さんの帰りを待っていると、程なくして一希さんが帰宅した。


「ただいま」

「お帰りなさい」


 疲れているような足取りの一希さん。一希さんの手から鞄を受け取る私は、それがいつのまにか当たり前になっていた。


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