冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
「ただいま」
ボサボサの髪で寝起きのような格好の母。片手には煙草を持っていて、服ははだけており、一見ホームレスだと思われてもおかしくはないと思う。
母は男次第で容姿が変化する。恐らく今付き合っている男性は素行が良くないのだろう。
私は母の為に準備をしていた封筒を差し出し、それを「はい」と手渡した。
「あんた、もうすぐボーナス入るでしょ? 全部頂くからね」
母には給料の半分を渡す決まりだ。私の手取りは毎月25万。そこから半分母に手渡すため、約12万が私のお金になるのだが、そこから実家の家賃や光熱費も全て私が払っているため、手元に残るのは5万あるかないかのため、いつも生活はギリギリだった。
私からお金を受け取った母は、上機嫌でリビングのソファーに腰掛けた。お母さんとお父さんが離婚をした時、父が置いていった家具や家電のおかげで余計な出費は出さずに済んだ。
父は母のことは毛嫌いしていたが、私には優しかった。
今どこでなにをしているのだろう。
母からスマホを壊された時に父の連絡先も消えてしまったため、父が今どこでなにをしているのかは分からない。