冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて


 お母さんはさっきから何を言っているの。
 私を売るの? いくらお金に困っていたとしても、私の仕事に対してどうこう言うことはないと思っていたのに……


「まってお母さん。私、一希さんが……」


 『一希さんが好き』そう出かかった言葉を飲み込むと、母は私が掴んでいた腕を振り払った。


「あの人はダメよ。私のこと、ちっとも考えてくれてないじゃない」

「お母さんと結婚するわけじゃないんだからいいじゃん!」

「旦那は義母も大切にしなきゃダメでしょう。アンタの旦那には将来面倒見てもらう予定だし、同居もしてもらわなきゃ困るのよ。なのにアイツったら、アンタに近寄らせないだのなんだの。ふざけんじゃないわよ。アンタの旦那は私が見つけるからね」


 一希さんはどこまでも私のことを思ってくれていた。なのに、私は一方的に自分の感情を押し付けて。一希さんの感情をこうだと決めつけて、話も聞かずに出てきてしまった。


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