冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
後部座席に荷物を乗せ、急いで荷物を積み乗り込んでいると、助手席に座っていた黒いハットを被った男性が降りた。
お母さんは焦った様子でこちらに走ってきたが、立ちはだかる男の人を見て真っ青な顔をしながら足を止めた。
赤信号になり、お母さんを乗せていた黒いワゴンは再び動き出した。
「ーー一希さん、あの人は……それに、前の車、お母さんを乗せないで走っちゃってます……」
「大丈夫。前の車は俺の味方。何日も前から忍び込ませてた」
「何日も前から……ですか?」
「それはそうと、詩織が乗り込んだ時、助手席から降りた男の人がいたろ。見覚えない?」
……見覚えといわれても、後ろ姿しかみてなかったから誰か分からない。ただ、男性のことで覚えていることは、後ろ首の真ん中に二つホクロがあったということだ。
後ろ首の真ん中と言われても、心当たりある人がいない。
唯一思い出した人物は、私の父親だった。
父親も背首の真ん中にホクロが二つあったけれど……まさか……
「あの助手席に座っていた男性は私のお父さんとでも言うんですか?」