冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて


 身を乗り出して後ろから問いかけると、一希さんは「うん、そうだよ」と頷いた。


「……なんでお父さんが……」

「お父さんは詩織がこの店で働き始めたころ、お店に挨拶に来てくれてたよ。黙っててほしいって言われてたから詩織にはずっと言わなかったけど、時々お客さんとしても来ていたし、実はお父さんの連絡先貰ってたんだ。だからお母さんがどんな人かはお父さんから聞いて知ってた」


 お父さんがお客さんとして来ていたなんて全然分からなかった。


「お父さんのこと大好きだったのに、なんで私は気づかなかったんでしょうか……」

「お客さんとして来ていたって言っても、決まって混んでいる時間帯だったし、帽子とサングラスをして詩織の顔をちらっと見て帰ってたみたいだし」

「そうだとしても……知らなきゃいけなかったんです」

「あんな変装されたら分からなくてあたりまえだよ。あと、お母さんのことだけど、夜の街に出ては、いろんなところでお酒を飲み歩いて、複数の人と体の関係を持ってたみたい。だから体の関係を持たないようにギリギリまで近づいてもらって、詩織の役に立てたらいいなって思ってたんだ」


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