冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて



 もう私に近づかないようにとお叱りを受けた母。母方の祖父、祖母に連絡をしていたようで、数十分後、祖父祖母が交番に到着した。


「詩織ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさいね」

 母が仕出かした事を聞いた祖父、祖母は私と父に土下座をして謝罪をしているが、当の母は子供のようにすねた顔をするだけだった。


「おじいちゃん、おばあちゃんに謝ってほしいわけじゃないです。私はお母さんに謝ってほしいんです。私への謝罪はなくていい。けど、一希さんに暴言を吐いたことを謝ってほしい」

「……謝らないわよ。アンタのせいじゃない。なにもかも、アンタが……アンタが出て行ったのが悪いんでしょうが!」

 母の怒りの矛先が父に向いた。


「やめて! お父さんは悪くない! 仕事もせずに、家にもろくに帰らず遊び回ってたお母さんが悪いんじゃない!」


 お父さんを庇うと、お母さんはへたへたとその場に腰を抜かした。


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