冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて



「毎日毎日料理や洗濯に家事。感謝されない日々に疲れてたのよ! いいじゃない、少しくらい!」

「感謝してたよ。小さい頃いつもありがとうって伝えたし、お母さんがキツそうな時は私も手伝った! お母さんがいない時は全部私がやった! いつもありがとうって思ってたよ……でも、お母さんは少しの範囲を大幅に超えだして、遊び回るようになったじゃない! お父さんのせいじゃないでしょ! お母さんが自分勝手だっただけじゃない!」

 お母さんに感謝の気持ちがあったから、お母さんが心配だったから、毎月生活費も渡していたのに。


 私の気持ちは全然届いていなかった。


 過呼吸になりそうなほど、ハアハアと息を切らす母に、「今まで育ててくれてありがとう。でも、私はお母さんじゃなくてお父さんに育てられたって思ってる。もう、金輪際私達の前に姿を見せないで。今の私はもう、あなたのこと、母親って思ってないから」


 冷たい目で母を見ると、母の目から大粒の涙が流れた。


 お母さんの祖父、祖母はとても優しく、小さい頃から可愛がってもらえた。母も愛情いっぱいに育てられたに違いないのに、どうしてこうも歪んでしまったのだろう。


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