冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて
「詩織ちゃん、お母さんは私達が連れて帰るから。本当にごめんなさいね」
祖父と祖母は最後まで深く私と父に謝罪をし、その後、祖父の車で連れて行かれてしまった。
これで私と母は本当に縁が切れてしまった。もう、会うことはないだろう。
ちらっと一希さんに目を向けると、私の肩を優しく撫でてくれた。
「詩織、お父さんと数年ぶりに話した方がいいんじゃないか」
「……うん」
私達の一歩後ろで申し訳無さそうに立つ父。
ずっと会いたかったお父さん。
私が知らなかっただけで、お父さんはずっと私のことを心配してくれていたんだ。
お父さんが今何を思っているのかを知りたい。
「お父さん、私、もうとっくに成人したから一緒にお酒でも飲もう? 楽しい話、しよう?」
私がそう問いかけると、暗い表情をしていた父は「ああ」と、小さく微笑んだ。
その後、一希さんの車にお父さんも乗り、近くの居酒屋へと入ることになった。
一番端の四人掛けの席に、お父さんを対面にして、私の隣に一希さんが腰掛けた。