冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて



 お父さんは私を見るなり「詩織、すまなかった」と、申し訳無さそうに頭を下げた。


 話したいことは色々あるのに、なにを伝えたらいいのか分からない私に、一希さんは「とりあえず何か注文しましょうか」と、おつまみや飲み物を頼んでくれた。


 お父さんは帰りはタクシーで帰るらしく、ビールを注文。一希さんは車のため烏龍茶。私はお父さんと飲みたい為、甘めのカクテルを注文した。飲み物が届きお父さんに再度目を向ける。


「お父さん、謝らないで。お父さんはなにも悪くない」

「……だが、あの時俺とお母さんが離婚しなかったら、こんなことには……あの時、無理やりにでも詩織を連れて出て行くんだった」


 お父さんは私がお母さんに「アンタが出て行ったら死ぬ」などと言われていたことは知らない。



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