冷酷な御曹司に一途な愛を注ぎ込まれて


 一希さんと離れたくない。
 私の考えは、考えなくてももう、決まっている。


 「まあ、今は楽しく飲みましょう」と言う一希さんの言葉で、話題は違う話へと逸れた。


 その後お父さんと連絡先を交換し、皆でお店を出て解散となった。


 タクシーに乗り込む父を確認した後、一希さんと一緒に一希さんのマンションへ戻る。


 部屋へ着くと、一希さんは私の前へ小さな白色のジュエリーボックスを差し出し真剣な表情を向けられ、ドキッと胸が高鳴った。


「詩織、結婚してほしい。ずっと俺と一緒にいてほしい」


 ジュエリーボックスを開けると、綺麗な指輪賀私の視界を奪った。ダイヤのような、輝かしい宝石が指輪のいたるところに散りばめられている。


 いつから準備をしていてくれたんだろう。


 愛の告白に、差し出されている指輪に、涙が溢れた。


「……一希さんは私でいいんですか? 私、迷惑しかかけてないのに」


「迷惑だなんて思ってないよ。俺もね、詩織が好きだった。詩織がうちの店舗で働いてくれてる時から、いい子だな、かわいいなって思ってたんだけど、詩織、まだ若かったからね」


「そんなに前から気にかけてくれてたんですか?」


「うん。だから、同情でもなんでもない。詩織、俺と結婚してニューヨークに来てくれる?」

「――はい!」


 嬉しくて抱きつくと、一希さんは私の指に指輪をはめてくれた。



「うん、ピッタリだな。よかった」


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